高次脳機能障害

高次脳機能障害に関する裁判例のご紹介

札幌高裁平成18年5月26日判決 被害者 :17歳女性 症状  :頸部痛、記憶障害・言語障害 損害賠償:後遺障害3級3号認定、約1億1800万円 この事件では、17歳女性が、乗用車に衝突され、当初訴えていた頸部痛等の症状は事故後3ヶ月で症状固定とされましたが、約半年後から記憶力の低下や言葉が出ない等の症状が残存したとして、約1億2000万円の損害賠償を求めて訴えを提起しました。 一審札幌地裁は高次脳機能障害を認めず、女性に通院慰謝料約240万円の支払いしか認めませんでした。   これに対し、札幌高裁は「高次脳機能障害の要素を充足しているかについては、医学上の厳密な意味での科学的な判断ではなく、司法上の判断をする」として、被害者が高次脳機能障害であると認め、後遺障害3級3号と認定し約1億1800万円の支払いを命じました。 交通事故で高次脳機能障害の有無が争われたときに、基準となるのが自賠責保険における後遺障害等級の認定基準です。この認定基準で高次脳機能障害と認定されるには、 ① 明確な画像所見 ② 相当程度の意識障害 ③ 特徴的な精神症状の発症 が必要とされます。札幌高裁の平成18年判決は明確な画像所見や意識障害が認められない事案であり、自賠責の認定基準を満たしていないのに高次脳機能障害が認められた画期的な判決でした。その後、この判決は他の訴訟でも参考にされ、この判決を踏襲する裁判例、否定する裁判例の両方が現れています。   高次脳機能障害は「見えにくい障害」と呼ばれ、事故との因果関係を立証するのが困難な場合が多いです。しかし、社会的に高次脳機能障害という障害が認知されてきたことに伴い、自賠責保険の後遺障害等級認定において「高次脳機能障害認定システム」が導入されたり、裁判所も札幌高裁平成18年判決を筆頭に、事故による高次脳機能障害の被害者を広く救済する方向で判例を集積しているように見受けられます。今後、高次脳機能障害の医学的な解明が進めば、等級認定の基準がクリアになり、今までの基準では認定されなかった又は低い認定されたであろうケースでも救済される場合が増えてくるだろうと思います。   交通事故による衝撃が脳に与える影響は計り知れないものがあります。したがって画像所見・意識障害のない事案の場合であっても、本人の自覚症状、親族・友人の評価、本人に関する客観的データ(例えばテストの点数や本人の書く文章や筆跡など)を十分に斟酌して、事故による高次脳機能障害の被害者が広く救済される方向に進んでいくことが望まれます。  

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